経営者の老後資金準備に!iDeCo(イデコ)について解説。企業型DCという選択肢も。

iDeCO

中小企業の経営者の中には、あまり退職金が取れそうもなく、今から老後資金を少しずつ貯めたいと思っている方もいるかもしれません。老後資金を貯める方法には貯金のほかにも、NISA、つみたてNISAなどの投資や小規模企業共済、そして確定拠出年金という方法もあります。
この記事では個人型の確定拠出年金である「iDeCo(イデコ)」の概要、税制優遇の内容などのメリットをご説明します。また企業型確定拠出年金のひとつ「選択制DC」についても合わせてご紹介します。

iDeCoの概要

iDeCo

iDeCoは個人型確定拠出年金のことで、個人で加入するものです。国民年金基金連合会が運営しています。iDeCoの概要、加入できる人、税制上の優遇措置をご説明します。

確定拠出年金の個人版

確定拠出年金は加入者が掛金を拠出し、ご自身で運用します。運用の結果で、将来実際にもらえる金額が決まる年金です。金額が決まっているのが拠出する掛金の額であることから「確定拠出」と呼ばれています。
確定拠出年金の制度には「企業型」と「個人型」があり、個人型がiDeCoです。厚生年金や国民年金にプラスして老後の資金になります。

加入できる人

加入できる人は以下のとおりです。

60歳未満の人は原則誰でも加入できます。ただし2022年5月1日からは65歳未満までに引き上げられます。
・例外として、企業型確定拠出年金に加入している会社員は原則加入ができません。しかしこちらも2022年10月1日からは本人の意思で加入できるようになります。

このように基本的には年齢制限のみなので、中小企業の経営者や役員であっても加入できます。
中小企業の経営者が退職金代わりとして加入する「小規模企業共済」との併用も可能です。後述しますが両者はそれぞれメリット、デメリットがあり、特徴を補完しあうために組み合わせて加入するという選択もあります。

小規模企業共済については、詳しくはこちらの記事を参照ください。

https://semba-tax.jp/corpolate-advisor/small-business-mutual-aid/

掛金

掛金は月々5,000円から、1,000円単位でご自身が決められます。老後資産の形成が目的なので、基本的に60歳になるまで引き出せません。無理のない金額を設定しましょう。

掛金の上限は以下のとおりです。

・会社に企業年金がない会社員(中小企業の経営者も含みます)・・・月額2.3万円
・企業型DCに加入している会社員・・・月額2.0万円
・確定給付年金に加入している会社員・・・月額1.2万円
・自営業者などの国民年金加入者・・・月額6.8万円
・専業主婦(夫)・・・月額2.3万円

実際に運用するのは金融機関です。運営管理機関の一覧はiDeCo公式サイトで確認してください。運用商品のラインナップやサービス、手数料などを確認して、ご自身に合った先を選びましょう。

税制上の優遇措置

iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になります。所得控除は、所得税、住民税を計算する際に課税所得から控除できる金額です。
所得控除で節税できる金額は、年間の掛金の総額にご自身の税率を掛けると概算で計算できます。所得税率は課税所得によって異なりますが、住民税は10%です。

ただし所得控除により税金を減らせるのは、もともと課税所得があり税金を支払っていることが前提です。支払った金額以上の分は返ってきませんので、注意してください。
iDeCo公式サイトでシミュレーションが可能です。正確に金額を知りたい方はご覧ください。

また、運用時に運用益が出ても非課税で再投資されます。通常は運用益には源泉分離課税で20.315%の税金がかかるところ、優遇されています。

受取時の税金

受け取り方は、以下のとおりです。

・5年から20年の間の期間を設定して、年金として定期的に受け取る。
・一括で受け取る。
・年金と一時金を組み合わせて受け取る。ただし対応していない運営管理機関もあるので加入前に要確認。

60歳から受け取れますが、加入期間が10年以上必要です。60歳までに10年を満たない場合には、受給開始年齢が繰り下げられるので注意してください。

受取時の税金は以下のとおりです。

・年金・・・雑所得。公的年金等控除が使える
・一時金・・・退職所得控除が使える

いずれも優遇されていると言えるでしょう。

老後資金はどうためる?

中小企業の経営者の老後資金を貯める手段としては、iDeCoのほかにも小規模企業共済やつみたてNISAもあります。それぞれのメリットとデメリットをほかの手段と比較してご紹介します。

iDeCo 小規模企業共済 つみたてNISA
掛金の上限 立場により異なるが、原則として法人の経営者は月額2万3千円まで 月額7万円まで 年額40万円まで
所得控除 所得控除の対象になる 所得控除の対象になる 所得控除の対象にならない
引き出しの制限 原則60歳までは受け取れない 年齢関係なく廃業や退職で受給可能。

途中解約も可能(ただし20年未満の解約は掛金が元本割れする)

いつでも売却して受け取れる
受取時の税金 一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除が使える 一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除が使える 20年間非課税
受け取る金額 自分で運用し、運用結果に左右される 決められた金額がもらえる 自分で運用し、運用結果に左右される

それぞれ特徴があります。どの制度も併用できるので、組み合わせて加入するのもよいのではないでしょうか。

選択制DCという選択肢

選択制DC

ここまでiDeCo、「個人型」の確定拠出型年金についてご説明してきましたが、最近では中小企業でも「企業型」の確定拠出年金(以下、DC)を導入するケースが増えています。中でも「選択制DC」は加入者だけでなく会社側にもメリットが大きく、従業員の人数が5〜10人くらいの小規模な法人でも導入がしやすい制度ですのでご紹介します。

選択制DCの概要

企業型DCはいくつか種類があり、選択制DCは企業型DCの中のひとつです
企業型DCは事業主が主体で実施し、そこで勤務する従業員のみが加入できる制度です。大企業が社員の福利厚生として導入しているイメージで、中小企業には縁のないように思えます。しかし選択制DCは、会社側は掛金を拠出せず、従業員だけが拠出する制度で中小企業が導入しやすい制度です。

選択制DCは企業型DCなので従業員のみが加入できますが、経営者や役員も同様に加入可能です。加入するかしないかは従業員が選択できるので、いろいろな考え方の人がいる中でも導入しやすい制度です。

掛金の上限がiDeCoよりも高く、原則として55,000円まで可能です。掛金はiDeCoと同様に、加入者がご自身で運用します。

所得税、住民税の取り扱い

税金面の取り扱いは、選択制DCで拠出した掛金とiDeCoではまったく異なります。iDeCoは掛金が所得控除の対象ですが、選択制DCは掛金部分は給与扱いにならずそもそも最初から所得税、住民税の課税対象になりません

選択制DCを導入して、もし今まで給与が50万円の従業員が3万円の掛金を拠出する場合、源泉所得税の計算の対象になる給与は、加入した従業員は47万円、加入しない従業員は50万円になります。経営者にとっては今まで支払っていた給与の一部を掛金にあててもらうので、追加負担がなく導入できます

社会保険料が減る

選択制DCでは、掛金部分は給与扱いにならないので、社会保険料の算定基礎に含まれず、等級が下がれば社会保険料の支出が抑えられます。ここもiDeCoと異なる点です。

社会保険料は会社との折半なので、会社の負担が抑えられ、会社側はメリットしかありません。ただし加入者側では社会保険料の支払が減ると目先の支出は減るものの、将来の受給金額や何かあった時の手当金も減少しますので、念頭においておきましょう。

まとめ

 

以上、iDeCoを中心に老後資金準備の方法をご紹介しました。

iDeCoはかなり普及してきて、ほぼ誰でも加入できるようになりました。節税しながら公的年金にプラスした資金の準備が可能ですので、有効活用したいところです。ただし小規模企業共済と違い自分で運用することになるため、運用商品を選んだり見直したりといった手間もかかります。特徴をよく把握してご自身に合った方法を選択するとよいのではないでしょうか。

選択制DCは従業員の福利厚生の視点でも導入が進んできている制度です。小規模法人向けに導入支援をしてくれる金融機関が限られているのが難点ですが、最近では少しずつ普及してきています。社会保険料の負担が抑えられるという会社側のメリットが大きい制度ですので、中小企業の経営者向けに選択肢のひとつとしてご紹介しました。

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