源泉徴収が必要な報酬とは?計算方法や納付期限・freeeでの登録方法を解説

「源泉徴収が必要となる報酬はどういった種類なのか?」
「源泉所得税の納期の特例を受けている場合は、納付は半年に一回でいいのか?」

副業が当たり前になりつつある昨今、法人が個人に対して費用を支払うケースも多くなっています。

その際に注意が必要なのが法人側での源泉徴収義務です。

この記事では源泉徴収の基本について説明すると同時に、源泉徴収をした際のfreeeでの会計処理方法及び管理方法についても詳しく解説します。

1.源泉徴収とは

源泉徴収とは、給与や利子、配当、報酬等を支払う側が、その取引先への支払いの際に支払金額から一定の金額を差し引いて支払う制度のことをいいます。

源泉徴収は会社の義務とされているため、税務調査等においても論点とされる事項であり、徴収もれを指摘された場合には、本税のみならず、不納付加算税や延滞税も賦課されることとなるため、注意する必要があります。

上記の通り、源泉徴収の対象となる支払いについては様々なものがありますが、給与や利子、配当、報酬等のうち、今回は、報酬に係る源泉徴収について説明します。

なお、取引先からの請求書等に源泉所得税の記載がない場合であっても、当該支払が、源泉所得税を徴収すべき対象となる報酬等に該当する場合は、源泉徴収する必要がある点にも注意が必要です。

2.源泉徴収の対象となる報酬及び源泉徴収税額の計算方法

源泉徴収の対象となる報酬等の範囲については、所得税法204条①一~八において限定列挙されており、幅広い種類の取引がその対象となっています。

ここでは、法人における日常的な取引の中で発生すると考えられる代表的なものを抜粋して紹介します。

区分 源泉徴収税額の計算方法
・原稿料、デザイン料など 支払金額×10.21%

ただし、同一人に対し、1回に支払われる金額が100万円をこえる場合には、その超える部分の金額について×20.42%

・モデル料など
・弁護士、税理士、社会保険労務士、経営コンサルタントなど
・司法書士など (支払金額-10,000円)×10.21%

なお、あくまで取引先が個人である場合に源泉徴収の対象となるため、取引先が法人である場合には、源泉徴収をする必要はありません。

また、源泉徴収税額については、原則として、消費税等の額を含めた金額を支払金額として計算します。

しかし、取引先からの請求書等において、消費税等の額が明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた金額を支払金額として源泉徴収税額を計算することができます。

3.納付期限

源泉徴収した所得税については、原則として支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。

ただし、給与の支給人員が常時10人未満の法人において「源泉所得税の納期の特例」の適用を受けている場合には、以下のスケジュールに基づいて納付することができます。

  • 1月から6月までの間に支払った報酬等については、7月10日までに
  • 7月から12月までの間に支払った報酬等については、翌年1月20日までに

(参考)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm

ただし、「源泉所得税の納期の特例」の適用を受けている場合であっても、当該特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収した所得税と弁護士、税理士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した所得税に限られています。

したがって、例えば原稿料、デザイン料などの支払いの際に源泉徴収した所得税については、原則通り、支払った月の翌月10日までに納付する必要があるため注意が必要です。

4.支払調書の作成

源泉徴収の対象となる報酬等を支払った法人においては、支払先への年間の支払額が確定した時点で支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)を作成し、同一人に対する支払いが一定の金額を超える場合には、翌年1 月31日までに税務署へ提出する必要があります。

なお、よく誤解が生じているのですが、支払調書とは税務署への提出が必要な資料となりますが源泉徴収した取引先に送付する義務はありません。

5.freeeでの登録に関するワンポイントアドバイス

報酬等の支払いの際に徴収した源泉所得税については、「預り金」の勘定科目で処理することとなります。

以下に、例として税理士に対して報酬を支払った際の仕訳を記載させていただいていますが、こちらを使って登録の際のポイントをご説明させていただきます。

①必ず取引先を設定しよう!

源泉徴収の対象となる取引については、支払調書を作成する際に取引先ごとに年間支払額を集計する必要があるため、必ず取引先は設定しましょう。

②源泉徴収の対象となる取引先は勘定科目を固定しよう!

源泉徴収の対象となる取引については、支払調書を作成する際に取引先ごとに年間支払額を集計する必要があります。

様々な勘定科目に集計対象となる取引が分散していると集計対象先を把握することが困難となるため、源泉徴収の対象となる取引については、同一の勘定科目(上記例では「支払報酬料」)で処理することをおすすめします。

③「預り金」には品目を設定しよう!

源泉所得税の種類ごとに、以下の通り品目を設定することをおすすめします。(非居住者への支払いが頻繁にある場合などは、源泉所得税(非居住者)などの品目を設定することもお勧めです。)

  • 源泉所得税(報酬)
  • 源泉所得税(税理士等)
  • 源泉所得税(給与)

上述したように、「源泉所得税の納期の特例」の適用を受けている場合であっても、当該特例の適用を受けることができる報酬等は、弁護士、税理士、司法書士などの一定の報酬に限定されており、原稿料やデザイン料などの報酬には適用されません。

したがって、報酬等については納付スケジュール別に管理するため「源泉所得税(報酬)」と「源泉所得税(税理士等)」に区分しています。

預り金に品目を設定することで、上記のように試算表の預り金の勘定科目を品目別に展開して残高を確認することにより、納付のもれがないことを源泉所得税の種類ごとに確認することが可能です。(「源泉所得税の納期の特例」の適用を受けているという前提に立つと、「源泉所得税(報酬)」の残高は毎月10日に0となり、源泉所得税(税理士等)及び源泉所得税(給与)の残高は7/10及び1/20の時点で0となっていると正しく納付されているということとなります。)

まとめ

今回は源泉徴収の制度の概要、計算方法や納付期限について説明しました。

源泉徴収制度は細かい例外や対応が多く、理解が難しい部分もあります。

記事でご紹介した内容を踏まえ、正しく納付や手続を行うようにしましょう。

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