現金管理の重要性と、小口現金の管理を楽にする方法
中小企業の経理の中でも、煩雑だと思われているもののひとつに「現金管理」があります。現金管理というと、小口現金の管理を思い浮かべますが、それだけでなく会社と個人の現金を明確に分ける意味合いもあります。
この記事では現金管理の重要性をご説明し、さらに小口現金の管理を楽にできる方法も合わせてご紹介します。
現金管理の重要性
そもそも現金管理とは、会社にある「実際の現金」の入出金および残高と、会計帳簿の一致を確認することです。また、現金の入出金は会社の収入または経費であり、社長など役員のプライベート分には使わないように分けて管理することでもあります。
現金管理をしっかりおこなうべき、主な理由は以下の3点です。
- 不正の防止
- 税務調査対策
- 外部からの評価を得る
不正の防止
現金をしっかりと管理しておかないと、不正がおこなわれたり、盗難されたりするリスクがあります。例えば誰でも現金にアクセスできて、さらに残高の管理をしていなければ、盗難されてもわからない可能性があります。
小口現金程度であれば金額も大きくないかもしれませんが、現金商売の飲食店などでは多額の売上代金が現金で保管されるでしょう。一日の終わりに数を数えなければ、大きい金額が盗難されてもわからないという事態に陥るリスクがあります。また預金に預け入れるのが遅いと、多額の現金を保管することになり、さらに盗難や不正の可能性を高めます。
さらに、特に中小企業では、管理をするにしても「現金管理の担当者が一人」ということがしばしばあります。もしこの担当者が不正をしてしまうと、発見が遅くなってしまう可能性もあるでしょう。
頑張って営業活動をしても不正で損失が出ては意味がありませんので、現金管理はとても重要になります。
税務調査対策
税務調査では、現金は重要な調査項目のひとつです。現金管理に関しては、金庫にある現金を数えて、帳簿・現金出納帳との一致を確認します。現金の残高を合わせているかどうかで、会社の経理水準が推測できるからです。
あまりにも現金が管理されていないと、売上の回収代金を帳簿から除いているのではないか、などの疑いをもたれて調査が厳しくなる可能性があります。
外部からの評価を得る
現金管理をしっかりおこなっているかどうかは、税務署だけでなく、金融機関などの外部からもチェックされるポイントです。
残高を合わせることのほかに、社長個人のお金と会社のお金を区別するのも大切です。ごっちゃになっていると、会社の売上のお金を社長が抜いてしまう、会社のお金で社長のプライベートの支出をしたうえで会社の経費にしてしまう、など正確な税務申告、会計処理ができていないとみなされてしまう可能性があります。
外部からの評価を得て会社を成長させるためには、現金管理は必須です。
現金管理の仕方
現金管理の主要なポイントとして以下の5点をご紹介します。
- 日々の取引を帳簿・現金出納帳に記録し、実際の残高と合わせる
- 現金は金庫などに保管しておく
- 会社と社長の現金を区別する
- 小口現金をもつ場合には上限金額を決め、多額に持たないようにする
- 社内精算のルールを決める
日々の取引を帳簿・現金出納帳に記録し、実際の残高と合わせる
残高を合わせる時には、できれば担当者以外の人も確認するとよいでしょう。毎日ではなくても、どこかでチェックをする仕組みがあると担当者の不正を防げます。そして上長が承認し、責任を明確化しておきましょう。
中小企業では経理が一人であるケースもあるのではないでしょうか。もし人がいなくてダブルチェックが難しくても、完全に任せきりにせず、社長がチェックしておきましょう。
現金は金庫などに保管しておく
現金が誰でも手が届くところにあるのでは、紛失しても原因がつきとめにくくなります。
会社と社長の現金を区別する
会社と社長の現金を区別するためには、まずは社長が小口現金の出納をおこなわないことが大切です。社長の経費は領収書を提出して、経理から精算してもらいましょう。
小口現金をもつ場合には上限金額を決め、多額に持たないようにする
多額に現金があると不正や盗難のリスクが高まります。あまり大きな金額を持たないようにするとよいでしょう。
特に現金商売で売上を現金回収する場合には、こまめに預金へ入金することが大切です。
社内精算のルールを決める
あまり頻繁に現金精算をするのは、大変なうえに現金を多く保有しておく必要もあります。緊急でなければ従業員の経費精算を週に1度などと決めるとよいでしょう。そして必ず領収書などの書面をもとにおこないましょう。
精算のタイミングを決めれば、その時だけ多めの現金を保有すればよくなります。そして必ず領収書などをもとにすることで、正確な税務申告、会計処理をおこなえます。
現金管理を楽にする方法
現金管理は手間がかかり、経理担当者の負担になります。負担を減らすためになるべく楽におこなう方法を5点ご紹介します。ただしデメリットもありますので状況に応じて検討しましょう。
- 経費精算は給与振り込みでおこなう
- 仮払を併用する
- 支払はなるべく振込でおこなう
- 法人用クレジットカードの利用
- 小口現金を廃止してしまう
経費精算は給与振り込みでおこなう
経費精算では領収証の数が多くなりがちです。頻繁に精算すると経理の手間がかかります。
これを月に一回の給与とともに精算するようにすれば、現金を動かすこともなく、精算の頻度も減らせます。
従業員の数が多く、領収書もたくさんある場合には、経費精算システムを導入すれば経理も従業員も楽に精算できます。
仮払を併用する
大きな金額を従業員が立替するのは大変です。この場合は先に仮払をして、後日精算するようにしましょう。
精算時に現金を動かすことにはなりますが、仮払時と精算時だけで済みます。
これも経費精算システムを導入すれば楽に精算できます。
支払はなるべく振込でおこなう
金額が大きい支払はなるべく振込でおこなえば、大きな金額を現金で持たなくて済みます。特に仕入先などの継続的な取引先は、交渉してみましょう。
法人用クレジットカードの利用
経費の支払にクレジットカードを利用すれば、現金を持たなくてもよく、精算も不要になります。ただし領収書は必ず保存しましょう。
カードで支払うと、使いすぎてしまう可能性があります。上限を決めておく、事前承認を得る、などのルールを決めておくと、使いすぎを防げます。
小口現金を廃止してしまう
経費の支払はすべて立替とし、後日給与などと一緒に精算すれば、そもそも小口現金を持たずに済みます。
ただし会社の規模が大きくなれば、立替をする頻度や金額が大きくなることが想定され、立替する従業員はつらくなるでしょう。また、精算するまでに領収書を紛失してしまうリスクもあります。状況に応じて検討しましょう。
まとめ
以上、現金管理の重要性と管理の仕方、楽におこなう方法をご紹介しました。
現金管理は会計処理の基本中の基本です。たとえ手間がかかっても、かけるだの重要性があります。不正や盗難で大きな損失になったり、不適切な会計処理をして税務調査で指摘されたりしないためにも、しっかりおこなっていきましょう。
仙波総合会計事務所では、税務上の判断を始めとしてさまざまなご相談を受け付けております。ご相談は無料で行っていただけますので、お気軽にお問い合わせください。
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