給与から差し引く源泉所得税の計算方法と税務署への納付期限を解説

給与計算をするときに所得税を計算して差し引かなくてはならないけれど、どうやって計算すれば良いのか?

源泉徴収税額表を見たけど、月額表、日額表と種類があるし、中を見ても甲欄、乙欄などがあり、どれをあてはめたらよいか自信がない……

そんな方はいませんか?

給与計算を曖昧な知識で処理していると従業員からクレームがくる可能性があるだけでなく、源泉所得税は税務署から指摘されるリスクもあります。

この記事では給与計算をする時に差し引かなくてはならない源泉所得税について、その内容、計算方法、そしてfreeeでの登録方法について解説します。

1.源泉所得税とは何か?

源泉所得税とは、従業員が負担する所得税を前もって給与から差し引き、会社(又は個人事業主)が従業員にかわって税務署に納付します。

給与を支払うときには必ず源泉所得税を計算して差し引かねばなりません。

2.給与、賞与から差し引く源泉所得税の計算方法

ではどのように源泉所得税を計算するのでしょうか。

給与と賞与では参照する書面が違うので、以下でそれぞれ見ていきます。

(1)給与から差し引く源泉所得税の計算方法

具体的には「給与所得の源泉徴収税額表」を参照します。

源泉徴収税額表は毎年更新されるため、必ずその年のものを参照しましょう。

源泉徴収税額表には「月額表」と「日額表」がありますが、両者の違いは給与の支払サイクルです。

月ごとに給与を支給する場合は「月額表」を用いて計算します。

ここでは月ごとの支給を前提として、以下で具体例を見てみましょう。

(ステップ1)

月額表は以下のような書類で、給与金額ごとに源泉所得税の金額が書かれています。

まずは甲欄か乙欄かを確認します。

  • 甲欄:「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人にかかってくる税額
  • 乙欄:上記以外の人にかかってくる税額

ここで「給与所得者の扶養控除等申告書」とは、採用時に従業員が雇用主に提出する書類で、扶養親族等を記載することで毎月の源泉所得税の金額を算出するための根拠となるものです。

なお、扶養親族がいない場合でも空欄で提出する必要があるため、従業員を雇ったら、早めに書いてもらうようにしましょう。

ただし「給与所得者の扶養控除等申告書」は勤務先一カ所にしか提出できないので、二か所以上で勤務しており他ですでに提出している従業員は、もう提出ができません。

そういう従業員は「乙欄」で計算します。

(ステップ2)

社会保険料等控除後の給与等の金額から、ステップ1で確認した欄を見ると源泉所得税の金額が分かります。

例えば下記(1)~(4)の条件の人で実際に計算してみます。

(1)月額給与(額面)300,000円、社会保険料45,000円、交通費10,000円であった。
(2)「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がある。
(3)奥様は専業主婦で所得はなく、扶養している。子供は1人いるが、まだ2歳で税務上の扶養控除は取れない。

月額表の該当部分を見てみます。

(給与金額90,000円から245,000円までの間は省略しています)

社会保険料等控除後の給与等の金額は、300,000円-45,000円=255,000円です。

交通費は通常は非課税です。

扶養親族は奥様1人なので、上記表の甲欄を見て源泉所得税は5,140円になります。

源泉所得税が計算できたので、この人の給与計算の結果はこのようになります。

支給:給与(額面)300,000円、交通費10,000円 合計310,000円

控除:社会保険料45,000円、源泉所得税5,140円 合計50,140円

手取り額:310,000円-50,140円=259,860円

自ら計算する場合にはこのようになりますが、実務上は給与計算ソフトを利用し、前提条件を入力すれば自動で計算されます。

この場合は前提条件(月給であること、甲欄、扶養親族1名)を正確に入力し、変更があった場合は見直しをすることが大切です。

(2)賞与から差し引く源泉所得税の計算方法

次に賞与から差し引く源泉所得税の計算方法をご紹介します。

賞与の源泉所得税額の算出のための表は以下になります。

まずは前月の社会保険料等控除後の給与等の金額から、賞与の金額に乗ずべき率を出します。

そして賞与額から社会保険料等を控除した金額に、この率を乗じて税額を求めます。

前述の例の人がそのまま翌月に600,000円(額面)の賞与を支給されるケースを見てみましょう。

600,000円(額面)の賞与で社会保険料が90,000円であるとします。

前月の社会保険料等控除後の給与は前述した255,000円でしたので、甲欄、扶養1人を参照すると、率は4.084%となります。

このため賞与の源泉所得税の金額は以下のように求めます。

600,000円-90,000円=510,000円

510,000円×4.084%=20,828円

3.税務署への納付期限

源泉所得税は原則として支払った月の翌月10日までに税務署に納付します。

ただし例外があり、給与の支給人員が常時10人未満の会社または個人事業主は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出すれば、年に二回半年分をまとめて納付することができます。

その場合の期限は以下の通りです。

  • 1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・7月10日
  • 7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・翌年1月20日

なお、納期限に遅れると本税に加えて以下のペナルティがあります。

(1)不納付加算税

期限を1日でも遅れてしまうと課税されてしまいます。

自ら気付いて納付した場合は税額の5%、税務署の通知に基づいて納付した場合は税額の10%が課税されます(ただし不納付加算税の計算結果が5,000円未満は課税されずに切捨てられます)。

預かった源泉所得税の金額が大きいほど影響があるため、納付期限には注意しましょう。

ただし過去1年間で納期限に遅れたことがなく、納期限1月以内に納付していれば不納付加算税は課税されずに済みます。

期限に遅れてもペナルティがなかったと甘くみて、再び期限に遅れると課税されることになりますので注意してください。

(2)延滞税

延滞税は納付日までの日数に応じてかかる利息です。

令和3年1月1日以後は、納期限の翌日から2月を経過する日までは原則として年7.3%、2月を経過した日以後は原則として年14.6%がかかります。

ただし、当該金利は市場金利とあまりにもかけ離れているため、「延滞税特例基準割合+1%」を選択することが可能となっています。

具体的には令和4年度については2月を経過する日までは年2.4%、2月を経過した日以後については年8.7%となっています。また、延滞税が1,000円未満の場合は免除されます。

納付期限より遅れるほど延滞税の負担が重くなります。

遅れていることに気付いたら、なるべく早めに納付しましょう。

4.freeeでの登録に関するワンポイントアドバイス!

給与を支払った場合、freee上では以下のように登録し、徴収した源泉所得税については、「預り金」の勘定科目で処理することとなります。

その際、「住民税」及び「源泉所得税」については品目を設定することをお勧めいたします。(報酬の支払い時などにも源泉所得税を徴収することとなりますので、以下のような品目を事前に設定しておき、預り金を計上する際は適切な品目を選択して設定します。)

  • 源泉所得税(報酬)
  • 源泉所得税(税理士等)
  • 源泉所得税(給与)

預り金に品目を設定することで、上記のように試算表の預り金の勘定科目を品目別に展開して残高を確認でき、納付漏れがないことを源泉所得税の種類ごとに確認することが可能です。(「源泉所得税の納期の特例」の適用を受けているという前提に立つと、源泉所得税(給与)の残高は7/10及び1/20の時点で0となっていると正しく納付されているということとなります。)

まとめ

以上、給与から差し引く源泉所得税の計算方法と税務署への納付期限をご説明しました。

特に税務署への支払は納付期限を遅れるとペナルティが重いので期限に注意することと、金額が不足しないように預り金の残高をよく確認して正確な金額を納付するようにしましょう。

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