効率的な年末調整のやり方を解説 | 主な注意点も紹介

年末調整

年末調整は11月から年始近辺で業務が集中する上に、書類の数や記載事項も増え、さらに年に一度のことで業務内容を思い出すのも時間がかかることがあるのではないでしょうか。

このコラムでは年末調整に必要な書類と、主な注意点、そして年末調整を効率的におこなう方法をご紹介します。年末調整業務をする前に、一度確認しておきましょう。

 

年末調整とは

年末調整とは、従業員の1年間の給与の金額に対する所得税を計算して、確定させることをいいます。毎月の給与や賞与からは、概算で所得税を差し引いていますが、ここで確定させ、概算との差額を還付または徴収します。

年末調整の対象となる従業員は、原則として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しており、年末に在籍している方です。ただし年の途中で入社した方で、その年に前職がある方は、前職の源泉徴収票が必要です。もし入手できない場合は年末調整ができません。

年末だけでなく、年の途中で年末調整をおこなうケースもあります。詳しくは国税庁ホームページ、タックスアンサーNo.2665も参考にしてください。

 

提出が必要な書類は3種類

年末調整は、会社が支払った給与・賞与の金額から、各種所得控除、税額控除の金額を加味して、所得税を確定させます。適用できる控除は従業員ごとに異なるため、それを把握するために、従業員に書類を提出してもらいます。従業員に提出してもらう書類は以下の3点です。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下、扶養控除等申告書)
  • 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(以下、基礎控除申告書等)
  • 保険料控除申告書

さらに住宅ローン控除を受けて2年目以降の方は「住宅借入金等特別控除申告書」をローンの残高証明書とともに提出すれば、年末調整で住宅ローン控除を差し引いて所得税を計算します。

 

誤りやすい注意点

多くの会社では、年末調整は給与ソフトなどのシステムを利用して計算することになるでしょう。このため、計算の過程については基本的に自動計算でおこなってくれます

しかし、書類の内容を正確にソフトに入力しなければ、年末調整を間違えてしまうため、注意が必要です。また、そもそも従業員の方が正確に書類に記入をしてもらえない場合も同様に誤った計算となってしまいます。記入してもらわねば、会社側からは分からない情報も多いですが、従業員への事前の案内をしっかりおこなうことや、年末調整結果について前年と比較することなどで、できる限りチェックをしていきましょう。

特に注意すべき事項をまとめました。

扶養控除申告書

扶養控除申告書は、扶養控除などの対象となる方の情報を記載する書類です。ここに記載する情報に誤りがないよう、適用の要件を従業員の方へ事前に説明をしておきましょう。また、知らぬうちに子供が多く収入を得ていたなどのことがないように、扶養親族等の所得をしっかり確認しておいてもらえるようにしましょう。

基礎控除申告書等

基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書のすべてを1枚にまとめた書類です。

基礎控除申告書は、当年度の所得の金額の見込みを記入します。従業員の方は計算するのが難しく感じる欄になるため、年末調整の実施者は事前に説明をしておきましょう。自社の給与しか所得がない方であれば、社内で把握できます。しかし他に所得がある方は、従業員の方に申告してもらわないと把握できません。事前によく依頼しておきましょう。転職者が前職で退職金をもらった場合も記入が必要ですので、注意しましょう。

配偶者控除申告書については、適用を受ける場合には必ず記載があることを確認します。扶養控除申告書上で源泉控除対象配偶者に記載がある方は、配偶者控除申告書にも記載があるか確認しましょう。

所得金額調整控除申告書に、適用対象者は記載があることを確認します。もし夫婦ともに給与収入が850万円超の方であれば、23歳未満の扶養親族の方がいれば双方で同じ方を記入して控除を適用できます

保険料控除申告書

生命保険料や地震保険料だけでなく、個人で支払った国民年金保険料、国民健康保険の保険料、介護保険料などがあれば、記入してもらうように事前に案内しましょう。

年末調整を効率的におこなう方法は?

年末調整は一時期に集中する業務であるため、事務負担が大きくなります。できるだけ効率的におこなう方法として、以下の3点を紹介します。

  1. 事前準備をしっかりする
  2. システムで効率化を図る
  3. 税理士など外部に依頼する

それぞれ解説します。

1.事前準備をしっかりする

年末調整は1年に一度のことであり、業務フローを思い出すにも時間がかかります。これは会社側にも、従業員側にもいえることです。
まずは社内の年末調整の実施者が業務フローを確認したうえで、従業員の方へ周知しましょう。周知すべき主な内容は以下のとおりです。

  • 申告書類作成上の主な注意点
  • 制度改正があればその内容
  • 書類の提出期限
  • 書類の提出方法
  • 前年度の年末調整業務でつまずいた業務があれば、その改善策

業務がスムーズにおこなえるようにしっかり準備しましょう。

2.システムで効率化を図る

近年、クラウド化やペーパーレス化が推進され、給与計算業務や年末調整業務にもシステムを利用して業務効率化を図る会社が増えています

年末調整業務に関しては、上記でご説明した3種類の書類を、紙ではなくシステム上で入力し、電子で提出する方法があります。また、保険料などの控除証明書も電子で受け取り、電子データで読み込む方法も始まっています。

電子化の主なメリットは以下のとおりです。

  • マイナンバーを含む個人情報を書面で保管せずに済む
  • 保管スペースをとらずに済む
  • 書類を見て年末調整担当者がシステムに入力する手間が省けるだけでなく、入力ミスをなくせる
  • 証明書類の自動での読み込みを利用すれば、記載間違いを減らせる
  • 提出状況の管理がしやすい
  • どこからでも提出できるため、テレワークなどの場合も便利

ただしシステムの導入には費用がかかります。また、証明書を電子で入手するには、マイナンバーカードが必要な上、事前準備が必要で、まだまだ煩雑な面もあることは否めません。今後の改善に期待しましょう。

国税庁では、年末調整の電子化に向けた取り組みとして、年末調整ソフトを提供しています。無料、かつ電子化のメリットなどの説明もあり、一度確認してみるのもよいのではないでしょうか。「年末調整手続の電子化に向けた取組について」のサイトで紹介されています。ただし、国税庁の年末調整ソフトはあくまで年末調整の書類提出に関する業務のみで、その後の所得税の確定計算、給与計算には対応していませんので注意してください。

3.税理士など外部に依頼する

一時期だけに業務が集中してしまうと、経理などの間接部門に多くの人員を割けない中小企業では、業務に対応しきれないことも多くあります。

この場合は、税理士やアウトソーシング会社に業務を依頼すると効率的です。コストはかかりますが、雇用するよりは安いことがほとんどであり、また、専門性があるため正確に処理をしてもらえるでしょう

まとめ

以上、年末調整業務に必要な書類と、主な注意点、そして年末調整を効率的におこなう方法をご紹介しました。

年末調整業務は頻繁に変わる税制の内容を把握する必要があり、事務手続きが煩雑な上、ほぼすべての従業員から書類を提出してもらわねばならず、不慣れな方への周知や指導も必要です。まずは事前準備をしっかりとおこない、業務のシミュレーションをおこなっておくことが大切です。そして、選択肢のひとつとして電子化による効率化も検討してみるのもありでしょう。

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