【IT導入補助金】インボイス制度や改正電子帳簿保存法の対応に活用しよう

IT導入補助金

令和5年10月1日から始まるインボイス制度、そして、令和4年1月1日からすでに施行されているものの、電子データの保存に関しては2年間の猶予措置となっている改正電子帳簿保存法では、どちらもシステムの対応が必要なケースが多くあります。

システムを変更したり導入したりするには、時間も労力もかかりますが、大きく生産性をあげられることが期待できます。ただし、コスト面が気になるところではないでしょうか。

このコラムでは、中小企業に対して導入コストを補助してくれる「IT導入補助金」について、概要と、活用方法の一部をご紹介します。まだ申請していない方は確認してみましょう。

IT導入補助金の概要

IT導入補助金は、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入するコストの一部を補助し、業務の効率化を図ってもらうための補助金です。

年度ごとに予算がついていて、補助対象も変わるので、最新の要綱を確認しましょう。現在は「2022年度IT導入補助金」が募集されています。概要をご紹介します。

IT導入補助金の適用対象

適用対象は、中小企業と小規模事業者です。中小企業は、業種によって資本金や従業員のしばりが違います。例えば、製造業では資本金3億円以下か、常勤の従業員300人以下のどちらかにあてはまれば対象になります(個人事業も含む)。
また、小規模事業者は従業員数のみの要件で、製造業ならば20人以下であれば対象です。まずは自社が対象かどうかを確認しましょう。

詳細はIT補助金2022のホームページのこちらのページで確認してください。

IT導入補助金の趣旨

IT導入補助金の主な趣旨は、以下のとおりです。

  • 中小企業等が、自社の課題やニーズについてITツールを導入して解決し、業務効率化を図れるように支援する
  • 中小企業等が、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトを導入する経費の一部を補助し、インボイスなどの制度改正を見据えて企業間取引のデジタル化を推進する

制度改正を機会にして、制度に対応するだけでなく、企業間取引のデジタル化を推進し、企業の業務効率化を図るための支援をすることが目的です。

IT導入補助金の類型

IT補助金には、以下の3種類があります。それぞれの補助率、上限金額は以下のとおりです。

(出典:IT導入補助金2022

申請にあたっての注意点

以下のような注意点がありますので、確認しておきましょう。

  • 種類によって締め切り日が異なるため、IT補助金2022のホームページで確認したうえで、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
  • 申請に必要な「gBizプライム」の登録に、2週間くらいの時間が必要です。余裕をもって申請手続きをおこないましょう。
  • 交付決定前に契約、支払したものは対象になりません。IT補助金は、登録された導入支援業者と共同で申請、運用します。まず登録事業者と、導入予定のITツールを選んだうえで、補助金を申請し、交付決定後に実際の契約になります。
  • 補助金は導入後の入金になるので、それまでの資金繰りに注意する必要があります
  • 予算が決まっているので、早く申請したほうが採択されやすい可能性があります。
  • 過去3年間に類似の補助金の交付を受けていると採択されにくいと言われています(申請不可ではありません)。

申請手続きの概要は、以下のとおりです。

(出典:IT補助金2022

IT導入補助金の活用方法

どのような場面で活用できるでしょうか。IT補助金は、主には、ITツールを導入して業務効率化を図るための補助金です。ただしそれだけではなく、近年ではインボイス制度導入や電子帳簿保存法の改正があるので、それに対応するため、また改正を契機にして業務効率化も図るという活用方法が考えられます。

インボイス制度の対応に

IT補助金には通常枠以外に、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)があります。こちらはインボイス制度を見据えた企業間取引のデジタル化を支援してくれます

補助対象を会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化し、PCやタブレット等のハードウェアにかかる購入費用も補助対象となっている点が特徴です。インボイス制度の対応に適しているといえるでしょう。

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために適格請求書が必要です。適格請求書では、今までと異なり、消費税額の端数処理が1請求書あたり税率ごとに1回となります。計算方法だけでなく、記載すべき事項の要件も増えました。これに自社で発行するレシートや請求書がシステム対応できるかどうか、検討する必要があります。もし新しいシステムを導入する場合には、IT補助金が活用できる可能性があります。

さらに、この機会に請求書をデジタル化して効率化を図ることも考えられます。電子インボイスを導入すると、改ざんされる心配がない、データ入力が自動化できる、紙での保管が不要になり、管理・検索がしやすいなどのメリットがあります。こうしたシステムの導入にも、IT補助金が活用できる可能性があります。

インボイス制度の概要については、こちらの記事もご参考にしてみてください。
「インボイス制度とは?いつからはじまるか、必要な準備と対策を解説!」

デジタル化の促進~電子帳簿保存法改正を機会に

電子帳簿保存法の改正により、帳簿書類等を電子保存する要件が緩和されました。このため、これを機会に経理関係業務のデジタル化を促進することが考えられます。

その際には、まずは業務フローの棚卸をして、どの業務を電子化すると業務効率が図れるかを検討しましょう。経理関係業務の業務フローは会社によってさまざまなので、自社で一番効率化が図れる方法をしっかり考える必要があります。

電子帳簿保存法の規定は、大きく以下の3区分に分かれています。

  • 電子帳簿等保存
  • スキャナ保存
  • 電子取引

中でも電子取引は「電子データで受領した書類は、必ず電子データのまま保存しなければならない」という義務化がされ、中小企業も対応する必要があります。

電子帳簿等保存とスキャナ保存は、事前に税務署長の承認が必要だったのが、不要になるなどの要件が緩和され、電子での保存のハードルが下がりました

これを機会に、帳簿書類を電子化すれば、業務効率をあげられる可能性があります。主なメリットは以下のとおりです。

  • 会計帳簿は特に書類が多くなるので、保管スペースを大きくとる場合が多くあります。また、ファイリング作業も必要です。書類の電子化により、これらが不要になります。
  • 書類を電子化すると、書類を探す場合に検索がしやすくなります
  • 書類を電子化すると、場所や時間にとらわれずに、その書類を見ることができるようになります。これにより、テレワークなど多様な働き方が可能になります。

電子帳簿保存法に対応するためには、システムの導入が必須でしょう。その際にはIT補助金が活用できる可能性があります。

電子帳簿保存法の概要については、こちらの記事も参考にしてみてください。
「【電子帳簿保存法】紙での保存が不可!?令和4年1月の法改正以降は要注意!」

まとめ

以上、IT補助金の概要と、活用方法についてご紹介しました。近年、制度改正が続いているため、IT補助金の内容や予算が充実しています。この機会にITツールを導入して、業務効率化を図ることを検討してみてはいかがでしょうか。

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